
ストーリー
新宿。昭和の香りいまだ漂う小さな飲み屋が集まるセントラル街。酔客の喧騒あふれる入り組んだ路地が、その日はいつもと違ったざわつきで満たされようとしていた。騒ぎの発端は映像プロダクション「ハラダ・フィルム」の社長・原田美輝。異業種交流会でつかまえた焼酎メーカー会長・中川大輔を馴染みのスナック「小指」で接待しようと駆け込んで来る。臨時雇いのママ・久里子は、原田自身も狙うミステリアスな美女だ。だが、同じ目論見のライバル社「港プロダクション」の社長・港洋一とディレクター・堤俊夫も後を追って町にやって来る。そうでなくてもセントラル街では今、地上げ・立ち退き問題が起きており、東通り組合長でゲイバー「しょうちゃん」の主人しょうちゃんと西通り組合長でゲイバー「うまなみ」の店主うまちゃんを中心に、町の存続をかけて揺れに揺れている。さらには義父・繁夫を探す主婦・美智子。平和運動を展開中のやくざ、月組組長の月松五郎とライバル星組組長・星城之助ら、町の住人と客が入り乱れ、思わぬ事態に発展し・・・。
作・演出・出演
作:鈴木 聡
演出:鵜山 仁
出演:佐藤B作、佐渡稔、石井愃一、あめくみちこ 他
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(194回例会)
日時:2021年3月24日18:30開演、3月25日13時開演
会場:町田市民ホール
作品概要
本作は、演劇、映画、テレビドラマから新作落語まで幅広く執筆し、喜劇作家として高い評価を受けている鈴木聡氏の書下ろし。演出には、その確かな手腕でストレートプレイからミュージカルまで演出を手掛ける鵜山仁氏。2012年から4年間にわたり「創立40周年記念公演」として5作品を連続上演後、次の50周年に向けて歩み出す第一歩となった本作。“まだまだ終われない”劇団の、エネルギー溢れる作品です。

劇団東京 ヴォードヴィルショー
創立以来喜劇にこだわり続ける劇団
1973年、座長・佐藤B作を中心とした当時20代の男性5人で、「誰にでもわかる軽演劇(ヴォードヴィル)をやろう」と結成。現在も在団している創立メンバーは佐藤と佐渡稔の2名のみだが、結成から変わらず日本の喜劇を追求し続けている。
結成当初は自分たちで創りあげるアドリブ満載の喜劇を上演していたが、現在は台本重視の喜劇にこだわり、三谷幸喜や松原敏春、水谷龍二、中島淳彦などの喜劇作家による、ドラマ性の高いシチュエーションコメディを上演している。
2013年には『パパのデモクラシー』『その場しのぎの男たち』でその舞台成果に対して、第48回紀伊國屋演劇賞団体賞を受賞
見どころ
脚本鈴木聡氏僕は1982年に広告会社に入社して14年間、社員でした。まさにバブル時代とその前後。そりゃもう凄かったです。月の残業200時間なんて奴もざらにいた。本作の主人公、B作さんが演じる「ハラダ」はそんな時代を経験してきたと思ってください。特に彼は小さなCM制作プロダクションの社長だから、忙しさもバブリーさも、その後の落ち込みもひときわ。バブルのツケの借金をようやく返し終えたと思ったら、65歳。結婚生活にも失敗して家庭もない。何もない。人生このままじゃ終われない・・・と思っている。その彼がチャンスをつかみ、人生の一発逆転を狙います。行きつけの昭和遺産的飲み屋街、アナログ人間のワンダーランドのような「セントラル街」で、人々を巻き込んで狂騒の一夜が始まる・・・(ちなみにこの街、新宿のさまざまな界隈をコラージュした架空の街です。探さないでくださいね)。デジタルってやつはね、人間の生活をほんとうに便利にしてくれて素晴らしいと思うんですけど、あくまでも道具と考えたほうがいいんじゃないかと思うんですよね。アナログは不合理、非効率、ダサい、めんどくさい、時代遅れ、ってことになってるけど、人のエネルギーはアナログ的なコトやモノを大事にした方が生まれるような気がします。思いがけない創造とか、心が通う出会いの楽しさとか。僕のそんな想いを敬愛する大先輩劇団「東京ヴォードヴィルショー」に託します。この劇団こそ、エネルギッシュなアナログのワンダーランドみたいでしょう?舞台のエネルギーがそのままお客さん一人一人に乗り移りますように。熱いですよー。
演出 鵜山仁氏
(前略)国でも、会社でも、劇団でも、家庭でも、自分の居場所に執着することと、そこから離脱せざるを得ないことがいよいよ差し迫った葛藤を生む。そんな年齢間をひしひしと感じさせる今回の戯曲、そして座組でもあります。この芝居の舞台は、町ぐるみ地上げ立ち退きの脅威にさらされている「セントラル街」。まあここに限らず、この人生どこをどう渡り歩いても所詮は仮の宿。われわれは早晩、この世に居場所がなくなるわけで、ならば一体どこに向かって何を歌えばいいか、というわけで、何かと考えさせられることが多いお芝居です。情だとか熱だとか感動だとか、そういう数字にできない、だからしばしば扱いに困るアナクロアナログのエネルギーが、実は千年万年何億年というスパンでこの宇宙を動かしている。そういう狂信めいた確信が、そもそも芝居を創る動機になっているという点では、この稽古場に集まった老若男女、いささかの共通点があるんじゃないかと思われます。だとすれば、「セントラル街」をネバーランドの入り口にして、人生たかだか八、九十年というチマチマした時間を超えたところに自分の居場所を見つけるべく、旅に出てみればいいかもしれない。そんなさすらい感というか、能天気な宇宙観が、本多劇場の舞台に立ち上げればいいかと・・・
≪町田演劇鑑賞会での鵜山仁氏の演出作品≫
第165回例会『女の一生』(文学座)、第166回例会『Be My Baby』(加藤健一事務所)、176回例会『青空の休暇』(イッツフォーリーズ)、第178回例会『怪談牡丹灯籠』(文学座)第189回例会『黄昏』(シーエイティプロデュース)、第193回例会『しあわせの雨傘』