「炎の人」(劇団文化座)

ストーリー

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホは福音伝道師として貧しい炭鉱夫町で鉱夫達と生活を共にしていました。ある日、炭鉱労働者のストライキが始まり、窮状を救おうと会社の幹部に訴える彼の盲目的な言動を、視察に来た伝道協会の派遣牧師から牧師の対面を汚すものと非難され職を解かれてしまいます。
職を失い画家になる決心を固めたゴッホはオランダの首都ハーグに移り、モデルで娼婦のシィヌと知り合う。結婚を望むゴッホに、彼女の素性を知る従兄であり師でもあるムーヴは結婚に反対し、絶縁を宣言。二人のやり取りを陰で聞いていたシィヌは失意のうちに彼のもとを去ります。
全てを失ったゴッホを慰めるのは唯一の理解者である弟のテオドールでした。
都会生活に疲れたゴッホはパリを離れ、大自然に囲まれた南フランスのアルルに移り、とり憑かれたように作品を次々と生み出していきます。この幸せな生活も、ゴーギャンを招いたことによって崩れ去ってしまいます。心で尊敬しあいながらも衝突する二人。
ある日、ゴッホは愛する酒場の女ラシェルがゴーギャンの膝の上にいるのを目撃。ゴーギャンを失いたくない自省と狂気の中で、彼は己の耳を切り落とした。

作、演出、出演

作:三好十郎 
演出:鵜山 仁
出演:藤原章寛(ゴッホ)、白幡大介(ゴーギャン)、岡田頼明(テオドール)ほか


(200回例会)
2022年4月4日(月)18時00分開演/ 5日(火)13時00分開演
会場:川崎市多摩市民館

作品紹介

文化座の描くゴッホは、あくまでも若く未熟で孤独です。しかし、兄の才能と貧しい生活を支えた実弟テオドールや、親友でライバルでもあったゴーガンなど多くの人々が彼の人生に関わっています。無名の芸術家の無垢な魂と、彼を支えた人々を丁寧に描き出した三好十郎の名作です。

★絵画史の中のゴッホ

ファン・ゴッホは、ゴーギャン、セザンヌ(後期)、オディロン・ルドンらとともに、ポスト印象派に位置付けられている。
ルノワールやモネといった印象派は、太陽の光を受けて微妙なニュアンスに富んだ多彩な輝きを示す自然を、忠実にキャンバスの上に再現することを目指した。そのために絵具をできるだけ混ぜないで明るい色のまま使い、小さな筆触(タッチ)でキャンバスの上に並置する「筆触分割」という手法を編み出し、伝統的な遠近法、明暗法、肉付法を否定した点で、アカデミズム絵画から敵視されたが、広い意味でギュスターヴ・クールベ以来の写実主義を突き詰めようとするものであった。
これに対し、ポスト印象派の画家たちは、印象派の余りに感覚主義的な世界に飽きたらず、別の秩序を探求したといえる。ゴーギャンやルドンに代表される象徴主義は、絵画とは単に眼に見える世界をそのまま再現するだけではなく、眼に見えない世界、内面の世界、魂の領域にまで探求の眼を向けるところに本質的な役割があると考えた。ゴッホも、人間の心が単に外界の姿を映し出す白紙ではないことを明確に意識していた。晩年3年間において、赤や緑や黄色といった強烈な色彩の持つ表現力を発見し、それを、悲しみ、恐れ、喜び、絶望などの情念や人間の心の深淵を表現するものとして用いた。そして、「自分の眼の前にあるものを正確に写し取ろうとするよりも、僕は自分自身を強く表現するために色彩をもっと自由に使う。」と宣言した。(ウイキペディアより)